昨今、球場には赤いユニフォームを着た女性が増えている。世にいう「カープ女子」。昨年来の快進撃と相まって急増している、広島東洋カープを熱烈に応援する女性たちである。
いまや全国各地の書店に「カープコーナー」が設置され、選手や球場観戦に特化した書籍や、カープを特集した雑誌が山積みとなっている。都内の書店でも、やたらとカープ関連の「赤い本」を見かけることが多くなった。これまで大きなスペースをとっていた巨人、阪神の関連本を棚の隅に追いやり、その勢いは止まるところを知らない。都内の書店員が語る。
「12球団初、JTBが発行するカープ専門の旅行雑誌『るるぶ広島カープ』が出たかと思えば、野球に興味のなかった高校生が、球場へ行ったことがきっかけで熱烈なカープファンになる漫画『球場ラヴァーズ』(少年画報社刊)も大人気です。客層ですか? 確かにこれまでスポーツコーナーを覗くようなことのなかった若い女性のお客さんが目立ちますね」
これまでどうも野暮ったいイメージしかなかった広島ファンだが(失礼!)、最近は女性の観客、いわゆる「カープ女子」が増え、東京の試合でもレフトスタンドが赤く染まる。特に神宮球場では、ヤクルトファンが「どちらのホームかわからない」と嘆くほどだ。
ところでカープの何がそんなにいいのか。好きになったきっかけを聞いてみると、まずは、「マエケン(前田健太投手)が好き」(20代・会社員)、「菊池(涼介)選手がかっこいいから」(20代・家事手伝い)といった、応援する選手がいるからという理由が挙がった。中には、「育てた選手を他球団に取られ続ける哀愁がたまらない」(30代・主婦)という、Mっ気(?)のある意見も出たが、まァこれも立派なファンの1人だろう。
だがもっと多かった声が、「ユニフォームがかわいい」、「カープ坊やにキュンとくる」、「赤色が好き」という理由だった。野球ではなく、入り口はそのファッション性だったという意見だ。要するに、「カープファン」を流行の一部と捉え、それに乗っている感覚のようだ。
そのためか、最近はこんな珍事が起きた。あるカープファンの女性が、某ファッション誌でカープ女子特集を組むというので撮影現場に行ったところ、まったく話が噛み合わなかったというのだ。「マエケン」「ソヨギ(梵英心)」という、ファンなら当たり前にわかる言葉も、現場ではまるで外国語。
どうやらいま巷には、カープのことを知らない「なんちゃってカープ女子」が出現し始めているようなのである。取材を進めると、「カープ男子」いや「カープおやじ」からも、不快感を示す声が上がった。
「実はカープが大して好きでもないにわかファンの子って、特徴があるんですよ。どこで聞いたのか知らないけど、決まって“お金がないのに頑張っているところが好き”という。本当にそう思っているのか、単なる受け売りかは、樽募金(※注)の話を振るとわかる。全然通じないから」(40代・自営業)
【※注】樽募金/広島は球団発足当初、運営資金が乏しく、1951年には大洋ホエールズとの合併または解散という危機にさらされる。しかし広島市民が猛反発。当時の本拠地だった広島総合球場入り口に酒樽を設置して募金を呼びかけ、400万円以上を集めた。
「“昔は弱かったのに、やっとここまできたよね”などと、なぜかやたら上から目線。昔からのファンはそんなこといいません。それにこの間、“野村(謙二郎)監督は名監督”といっていた人がいて、完全に最近ファンになった人だと思った。真のファンはまだノムケンを信じられない」(30代・建築業)
様々な意見が寄せられたが、その中にあった30代・男性会社員の意見は、核心をついている。
「自分で自分を『カープ女子』だといいふらす人ほど、決まってカープが好きじゃない。本当のカープ女子は自分がカープ女子だともてはやされることを嫌がる。普通に、『カープファン』だといいますから」
とはいえ、熱狂的で知られる広島ファンは純粋で一途。長く5位、6位の暗黒時代を味わってきただけに、ファンの中には「今は野球がわからなくても、これから覚えていこう、純粋に楽しもうと思って球場に足を運んでくれれば、すぐに一体になれる」という意見も多かった。
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