1992年の巨人戦では、代打で起用されて涙をこらえながらボックスに立った。
引退発表がその試合の前後であり、このとき球場にいた観客には知る由も無かったため、なぜ彼が涙をこらえているのかわからない人が多かったという。
実はこの打席に入る前に、この試合の球審の井上が相手巨人捕手の村田真一に、達川に聞こえるように
「今日は、達川の引退試合だぞ!」と真っ向勝負をやんわりとリクエストしていたのである。
しかも、この井上球審は達川とは以前ストライクゾーンについて大喧嘩を起こしており、犬猿の仲の関係。
そんな人からの思わぬ一言に感動してしまったようです。
引退試合をホームランで飾りたかった達川は、「よく乾燥した木製バットは良く飛ぶ」という話を聞いて、自分のバットを十分に乾燥させて打席に臨んだ。
しかし、この話は間違いであり、乾かしすぎたバットは、ミーティングに耐え切れずに折れてしまった。
(水分を吸いすぎた木製バットは重い上に反発性が下がるため、バットは常に適度に乾燥しているのが望ましいのは事実。ただ、一定レベルを超えて乾燥しているバットは、柔軟性を失ってむしろ脆くなってしまう)
結果、達川の最終打席はショートゴロ。ちょっと悲惨な話だが、今となってはこのエピソードは、自他共に認める「達川らしい引退」となっている。
ちなみに、このバットは試合後、球場のゴミ箱に捨てられていたのだが、実は当時バイトでバットボーイをしていた学生がこっそり持ち帰り、宝物にしていた。後に彼は、新聞やテレビなどにこのバットとともに出演している。
打席後、彼の引退が発表されて球場は涙に包まれたが、試合後の挨拶では、タイムリーエラーをした巨人の選手を大声で指名したかと思えば「以下同文!」とオチをつけるなど、一転して球場を爆笑の渦に巻き込んだ。
さらにこの試合は巨人戦ということでテレビ中継されていた上に試合が早く終わったおかげで放送時間内に上記の挨拶も放送され、全国のお茶の間にこの様子が流れるという色んな意味でオイシイ引退試合であった。