ハーフスイングを主審の死角を利用してごまかす―
人呼んで忍者打法を3年の歳月をかけて完成させ猛威をふるっていた―
東のグラウンドの詐欺師・球界の詐欺師こと大洋ホエールズ(現在の横浜DeNAベイスターズ)・市川和正捕手とは、同年代・同一リーグ・同一ポジションであり、意識しあってお互いを高みに導こうと切磋琢磨した同業者であった。
その達川のデッドボール詐欺の手口に手をこまねいてみていない男がいた。その男こそ、市川なのである。
東のグラウンドの詐欺師・市川和正捕手は目の前で繰り広げられる達川さんの新型デッドボール詐欺を一目で看破した。
そして、東のグラウンドの詐欺師・市川選手も忍者打法をあえて封印して右バッターボックスに立つや、おあつらえ向きの危険球にあわせて、手を引っ掻き回したのだ。
だが市川和正捕手には猛烈な勢いで成長していく達川さんへの焦りがあったのだろう。
あまりに強烈に手を引っ掻き回してついでにつねったものだから、手首が赤くなるどころか、本当に故障してしまったのだ。
東のグラウンドの詐欺師でもそうだったのだから、常人にはとても真似できる代物ではなかった。
一瞬に抜群の力加減を必要とする高等テクニックだったのだ。